地理院タイルを、混色させず、
視点が止まってから高精細に

国土地理院の地理院タイルは Web メルカトル図法で配られる。AAE はこれを一度「正距円筒図法」の 1 枚の画像に戻し、 海岸線などと同じ経路で任意の中心・任意の図法へと投影する。 ここで徹底している原則は 2 つある。ハザード図の色を補間で混ぜないこと、 そして動かしている間は粗く追随し、止まった瞬間に細かく描き直すことである。

1Web メルカトルから正距円筒へ

地図タイルは {z}/{x}/{y} の分割グリッドで配信される。AAE では表示範囲に必要な枚数だけタイルを結合してモザイク画像を作り、 Web メルカトルの座標から経緯度へ逆変換して、正距円筒図法の 1 枚の中間画像にリサンプリング(再標本化)する。 そこから先は仕組みのページで解説した経路とまったく同じであり、球面回転と対応表(LUT)の逆引きによって、 どの中心・どの図法にも同じ中間画像が追随する。タイルの提供元が日本の国土地理院であってもスペインの IGN であっても、エンジンに乗せる仕組みは 1 つである(欧州のタイルについてはタイルと LODを参照)。

2ハザード図は混ぜない

タイルのリサンプリング(再標本化)には 2 つの経路を用意している。標準地図や航空写真のような基図はバイリニア法(bilinear)で滑らかに補間し、 活断層図や浸水想定区域のようなハザード図は最近傍法(nearest)に固定する。 ハザード図における色は「ここがどの危険度の区域か」を示す記号そのものであるため、隣のピクセルと色を混ぜて中間色を作ってはならない。 最近傍法に固定することで、どれだけ拡大・縮小しても元のタイルに存在する色だけが画面に出力される。

ハザード図の扱いについて。 本エンジンにおけるハザード図(活断層図・浸水想定区域・欧州の洪水 T100 など)の表示は、公的機関が公開する図面を任意の中心・任意の図法で参照しやすくするための補助機能であり、防災上の判断の根拠とするものではない。 再投影・リサンプリング・ズームレベルごとのデータ取得状況(一部のズームレベルではデータを持たない場合がある)によって、元の図面と見え方が異なることがある。 避難・土地利用・建築などの判断にあたっては、必ず国土地理院・ハザードマップポータルサイト・各国の公的機関が公開する公式の図面および自治体の案内に従うこと。
種類再標本化(補間)理由
基図標準地図・淡色・陰影起伏・写真bilinear(バイリニア法)見た目の滑らかさを優先する。隣接画素との中間色が生じても地図上の意味は変わらない
ハザード活断層図・浸水想定区域nearest(最近傍法・byte 一致)色が区域の区分そのものを表す。混色すると「凡例に存在しない中間色」が生まれてしまうため、見かけの滑らかさよりも元の色の保持を優先する
活断層図のタイルを拡大したもの。区分の境界が段になり、色は元の色だけで構成されている。

区分の境界がピクセル単位でくっきり保たれ、色は元の 2 色だけで構成される。

同じ範囲を bilinear で拡大したもの。区分の境界に中間色の帯が出ている。

境界に中間色のぼやけた帯が出る。ハザード図ではこのような混色を許さない。

3LOD — 拡大に応じて細かさを切り替える

詳細度が上がる閾値と下がる閾値を別に持つ(ヒステリシス制御)ので、境界付近で拡大・縮小を繰り返しても絵がちらつかない。なお、OpenStreetMap の道路線と地図タイルの層はこの 4 段階の外にあり、それぞれ固有のズームレベル(z)を持つ。

LOD 段階使う場面切り替わる対象層
overview全球・半球陸地(GSHHG の 4 解像度 l / i / h / f)・河川・国境(WDBII の同 4 解像度)・Natural Earth の陸地・海岸線・湖沼(50m / 10m)
standard大陸
detail国
full都市・空港
LOD は「どの解像度の元データを読むか」の切り替えであって、地図の描画経路は変えない。どの段階でも同じ正距円筒図法の 1 枚に焼き、同じ対応表(LUT)の逆引きで任意の図法へ送る。

タイルのズームレベルと、視点が止まってから描く高精細(HQ)描画

地図タイルの側にもズームレベル(z)の階層がある。マウス操作で地図を動かしている最中は全球の粗い中間画像で高速に追随し、 視点が止まった瞬間に「表示されている範囲だけ」を高精細(HQ)タイルで描き直す。 画面の表示範囲に合わせて適切なズームレベル(z)を自動選択し、該当レベルのタイルが存在しない領域は 1 つ上の広域レベル(小さな z)のタイルで補完する(基図のみ。ハザード図は混色を避けるのと同じ理由で補完せず、データの無い段では描かない)。 また、基図のズームレベルはハザード図より 1 段階低く(粗く)設定し、読み込むタイル枚数と描画時間を抑えている。

操作状態何を描くかタイルの扱い
動かしている最中全球の粗い中間画像を LUT の逆引きで高速に追随させる新たに読み込まない
視点が止まった瞬間現在の表示範囲だけを高精細(HQ)で再投影し、粗い地図の上に重ねる表示範囲に必要なズームレベル(z)の枚数だけ読み込む
再び動かした瞬間高精細レイヤーを破棄し、即座に粗い中間画像の追随へ戻る一度読み込んだタイルはローカルキャッシュに残る

高精細(HQ)の描き直しは、その場所を初めて見るときは数秒かかる(タイルの読み込みと再投影)。同じ場所に戻るときはキャッシュにより速い。なお、下の動画は 1 フレームずつ高精細描画の完了を待って書き出しているため、この読み込み待ちは映っていない。

88 秒。太平洋中心のメルカトル図法から開始し、マドリードからの等距離円と 4 本の航空路を重ねている。そこから地図の中心をマドリードへ移動させ、さらにマドリード・バラハス空港まで約 11,000 倍に連続ズームする。 拡大率に応じて、海底地形(EMODnet)→ 100 年確率洪水浸水域 T100(スペイン IDEE / MITECO・nearest 補間で混色なし)→ 道路網(OSM)→ 航空写真(PNOA)へと高精細レイヤーが順番に切り替わり、最後に逆順で広域へ戻る。 途中のズームレベルで洪水レイヤーが一時的に消えるのは、該当レベルのタイルを取得しない設計としているためである。解説は字幕(日本語 / English)を参照。 GSHHG / EMODnet / IDEE / MITECO / © OpenStreetMap contributors / PNOA 2023 CC-BY 4.0 scne.es
77 秒。マドリード版の東京版。太平洋中心の世界図から中心を東京へ移し、皇居周辺まで約 11,000 倍に連続ズームする。 拡大率に応じて、標準地図 → 陰影起伏図(関東)→ 洪水浸水想定区域・想定最大規模(23 区)→ 標準地図(皇居周辺の街路)と地理院タイルの層が切り替わる。ハザード図は最近傍(nearest)で描き、色を混ぜない。右上は画面中央の 1 px あたりの実寸。解説は字幕(日本語 / English)を参照。 地理院タイル(標準地図・陰影起伏図・洪水浸水想定区域〔想定最大規模〕)/ 海岸線: GSHHG / 本映像は描画の実演であり、防災判断は公式のハザードマップを参照のこと

4地理院タイル(日本)

国土地理院が配信する地理院タイルとハザードマップポータルサイトの層のうち、次の 9 層を扱う。基図は 1 つを選び、ハザード図はその上に重ねる。

層種類補間と重ね方
標準地図 std基図bilinear
淡色地図 pale基図bilinear
陰影起伏図 hillshademap基図bilinear
色別標高図 relief基図bilinear
白地図 blank基図bilinear
全国最新写真 seamlessphoto基図bilinear
活断層図 afmハザードnearest・基図の上に重ねる
洪水浸水想定区域ハザード(ハザードマップポータル)nearest・基図の上に重ねる
津波浸水想定ハザード(ハザードマップポータル)nearest・基図の上に重ねる

取得とローカル管理

項目扱い
取得とキャッシュ範囲とズームレベルを指定して事前に取得し、手元のストレージに保存する。表示時には新たに取得しない(オフライン)。一度取得したタイルは再取得しない
GPU による再投影Web メルカトル → 正距円筒図法への変換を GPU で実行。基図は bilinear(CPU と最大 2 階調以内で一致)、ハザードは nearest(CPU と byte 単位で完全一致)
出典の表記層ごとに提供元の表記を持ち、書き出した画像に自動で添える(「地理院タイル(国土地理院)を加工して作成」など)
タイル内の文字標準地図などの文字は画像として焼き込まれているため、図法に合わせて一緒に歪む。文字を歪ませたくなければ白地図・陰影起伏図・写真を選ぶ
東京中心の正距方位図法に地理院の陰影起伏図を敷き、その上に活断層図と OSM の道路を重ねた図。西側は台地と低地の区分が塗り分けられ、東京湾の東では塗りが途切れる。
東京中心・正距方位図法・約 600 倍ズーム(1 px ≈ 87 m)。基図の陰影起伏図は bilinear、上に重ねた活断層図は nearest で処理し、さらに OpenStreetMap の道路網を重ねている。 活断層図(都市圏活断層図)は調査・整備された図幅の範囲のみ配信されているため、東経 139.8° 付近より東側では塗りが途切れている。これは元データの提供範囲どおりであり、描画の欠損ではない。 地理院タイル(陰影起伏図・活断層図)を加工して作成 / © OpenStreetMap contributors

5作例 — 関東

基図・ハザード図・移動体(航空機)を 1 枚の地図に重ねた作例。ハザード図のレイヤーだけが混色しない最近傍補間(nearest)の経路を通る。

関東地方の陰影起伏図に浸水想定区域が桃色で重ねられ、周辺に航空機の進行方向を示す矢印が描かれている。
関東地方の陰影起伏図の上に浸水想定区域を重ね、さらにその時点の航空機の位置と進行方向を矢印で描画したもの。 防災用の主題図は「色が混ざらず元の区分どおりに読めること」が求められるため、拡大・縮小しても元の色値をそのまま保つ専用の処理経路を分けている。 地理院タイル(陰影起伏図)を加工して作成 / 出典: ハザードマップポータルサイト(洪水浸水想定区域)/国土交通省・都道府県 / 航空機の位置情報: OpenSky Network(2026-10-15 09:51 UTC の記録)。 本可視化は技術デモであり、防災判断は公式のハザードマップを参照のこと。