流れを、どの中心から見ても

上空の気流も海面の海流も、経緯度の格子(グリッド)の各点に「東向き・北向きの速度」が記録された同じ構造のデータである。 AAE はこれを速さのラスタ(色)と向きの矢印の 2 つの層に分け、 任意の中心・任意の図法へ投影する。 蛇行するジェット気流も大西洋の湾流も、空港を中心に据えた正距方位図法などの上でそのまま読み取ることができる。

12 つのデータ源

気流Wind海流Sea
提供元ERA5 — ECMWF の気候再解析データ(Copernicus Climate Change Service)OSCAR — NASA/JPL の海面流速データ
何の速さか指定した気圧面における風速ベクトル(東西成分 u・南北成分 v)海面付近(表層)の流速ベクトル(東西成分 u・南北成分 v)
鉛直方向6 つの気圧面から選択(850・700・500・300・250・200 hPa)表層の 1 層のみ
時間分解能1 時間ごと(日付と UTC 時刻を選択)1 日ごと(日付を選択)
空間解像度0.25° 間隔0.25° 間隔
取得と変換Climate Data Store から NetCDF 形式で取得し、手元で専用形式(NPZ)に変換提供元から NetCDF 形式で取得し、手元で専用形式(NPZ)に変換
備考直近数日分のデータは ERA5T(暫定解析値)となるため、出力図版には「ERA5T」と明記する—
どちらのデータも、手元の環境では共通の Grid Vector NPZ v1 形式(経緯度グリッド + u 成分 + v 成分 + 時刻 + 高度)に変換して扱う。 対応するデータ形式の一覧はタイルと LODにある。 気流データは「1 ファイル = 1 気圧面 × 1 時刻」の単位で保存される。変換済みのファイル群は目録(manifest)で管理され、画面上の日付・時刻の選択肢はその目録から動的に生成される。

2速さのラスタと、向きの矢印

格子データは 2 つの層に分けて描く。役割が違うので、片方だけでも、両方重ねても使える。

層何を描くかどう地図に乗るか調整項目
速さのラスタ速度の絶対値 |v| を色に変換する。気流は 0〜100 m/s、海流は流速レンジに応じたスケールで色を割り当てる正距円筒図法の 1 枚の中間画像に焼き込み、海岸線と同じ対応表(LUT)の逆引きで任意の図法へ変換する。背景の基図の上、陸地ポリゴンの下に重ねる不透明度
向きの矢印格子点を一定間隔で間引き、各点に始点と方向を持つ矢印を描く。色は速さに応じた 3 段階(青 → シアン → 赤橙)始点と方向ベクトルを球面上で求めてから、観測点と同じ経路で平面へ順投影する。そのため、どの図法に投影しても地図上の正しい方角を向く間引きの間隔・矢印の大きさ・線の太さ
矢印レイヤーは気流か海流のどちらか一方を選択して表示する(同時には表示しない)。一方、速さのラスタは両方同時に表示でき、その場合は気流が海流の上に重なる。 画面右下には凡例を表示し、気流は風速(m/s (kt) の併記)および気圧面(フライトレベル FL 換算つき)、海流は流速のカラースケールを示す。
マドリード中心の正距方位図法に、250 hPa の風速を色のラスタと矢印で重ねた図。北半球のジェット気流の帯が蛇行して見える。

ラスタ(速さ)と矢印(向き)の両方を重ねた図。蛇行するジェット気流の帯が、中心からの距離と方位のまま読める。

ERA5(Copernicus Climate Change Service / ECMWF)/ NASA Blue Marble
同じ正距方位図法に海面流速を重ねた図。大西洋の湾流や南極周極流が帯になって見える。

同じ基図・同じ中心に、海面流速の格子データを載せ替えたもの。大西洋の湾流や南極周極流が帯になって見える。

NASA/JPL OSCAR / NASA Blue Marble
スピルハウス図法の上に海面流速を色と矢印で描いた図。黒潮と湾流が赤い帯になり、南極を回る周極流がつながって見える。

世界の海を分断せずに 1 枚に広げるスピルハウス図法に海面流速を重ねた図。南極を回る周極流も、西岸境界流(湾流・黒潮)も途切れずにつながって見える。地球規模で海流を見るなら、中心を選ぶより先に「海を切らない図法を選ぶ」ことが効く。

海流: NASA/JPL OSCAR(2026-07-05)/ 海岸線: GSHHG

3中心が動いても、流れは流れのまま

気流や海流のラスタ層は、図法や中心が変わるたびに一から計算し直しているわけではない。あらかじめ正距円筒図法で 1 枚に焼いた速さのラスタ画像を、中心が動くたびに対応表(LUT)で逆引き参照しているだけである。 また、向きの矢印は格子点ごとに球面上の方向ベクトルを持っているため、どの図法へ投影しても常に「その地点における正しい風向・流向」を指す。 下の動画のように地図の中心を連続して動かしても、流れの帯や矢印が破綻せず、地図の変形に追随して同じ地理的位置に留まり続けるのはそのためである。

ERA5 250 hPa(2026 年 10 月 12 日 00 UTC)。高度約 10 km の気流をメルカトル図法に重ね、中心をグリニッジ → マドリード → 東京へと動かした映像。ERA5(Copernicus Climate Change Service / ECMWF)/ 海岸線: GSHHG
OSCAR(2026 年 7 月 5 日)。海面流速を正距方位図法に重ね、中心をマドリードから東京へと動かした映像。NASA/JPL OSCAR / 海岸線: GSHHG
上の動画は動画書き出し専用の経路で生成しているため凡例は出ず、視認性のため気流のラスタを陸地と経緯線の上に半透明で重ねている(通常の画面表示では陸地の下に敷かれる)。

4画面での選び方

項目気流海流
層の ON / OFFラスタの表示切替ラスタの表示切替
日付・時刻変換済みの目録(manifest)から日付と時刻(UTC)を選択読み込んだデータファイルの日付を表示
高さ(鉛直面)気圧面(hPa)を選択—(表層のみ)
矢印の表示気流か海流のどちらか一方。間引き・大きさ・線の太さは共通
画像の書き出し画面の表示状態のまま、出力画像の解像度に合わせて矢印のサイズや線幅を自動調整して出力する
気流と海流は移動体・イベント(5 軸)ではなく、ベースマップに重ねる層(Layer)である。時刻つきの個別の点として入ってくる航空機や船舶とは別の経路で、面(フィールド)として地図に乗る。

5できないこと

項目現状の制約
海流の深さ表層 1 層のみ。深さ方向のデータ(Copernicus Marine など)は検討中で未実装
海流の時刻選択日ごとのデータであるため、時間単位の選択は無い
矢印の同時表示気流と海流の矢印はどちらか一方のみの表示となる。両方の矢印を混在させずに同時表示する表現方法は未定
予報データ扱うのは過去の再解析データのみであり、将来の予報データには対応していない
データの自動取得各提供元のアカウント登録と利用規約への同意が要る。事前に取得・変換した範囲だけが画面の選択肢に出る

6作例

格子データ(気流・海流)と点のデータ(移動体)は、それぞれ独立した処理経路を経て同じ中心・同じ図法の平面上で合成される。

マドリード中心の正距方位図法に 250 hPa の風速を色と矢印で描き、航空機の位置を橙の点で重ねた図。北大西洋のジェット気流の帯の東に欧州の航空交通が密集している。
マドリード中心の正距方位図法において、高度約 10 km(250 hPa)の風速場(ラスタと矢印)の上に、ある時点の航空機の位置(橙色の点)を重ねた図。 北大西洋を流れるジェット気流の帯と、大西洋横断路線および欧州域内の高密度な航空交通を 1 枚の地図上で同時に俯瞰できる。 なお、この図では気流(10 月 12 日)と航空機(10 月 15 日)に異なる日時のデータを使用しており、時刻は同期していない。「面の層」と「点の軸」を重ね合わせる描画構造を示した作例であり、特定便の運航と当日の風況の対応を示すものではない。 気流: ERA5(Copernicus Climate Change Service / ECMWF・2026-10-12 00 UTC)/ 航空機の位置情報: OpenSky Network(2026-10-15 09:51 UTC の記録)/ 海岸線: GSHHG